不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディング
これらの2つは商品として似ている点もありますが、仕組みや関連する法律など異なる点もあります。
今回は、この2つの共通点と相違点を紹介しながら、どちらがどのような人に向いているかを解説します。
目次
不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングの共通点
まずはじめに、不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの共通点を紹介します。
少額から投資可能
不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングは、少額から投資を始められる点で共通しています。
多くのファンドでは1万円から投資が可能ですが、ソーシャルレンディングでは1円から投資できるものも存在します。
運用期間が決まっている
多くの場合、ファンドの運用期間はあらかじめ決められています。
一般的に、運用期間は数カ月から3年程度で設定され、指定された運用期間が終了した後に投資元本が返金されます。
特に運用期間が12カ月以下のファンドでは返金と同時に分配金を受け取ることが多いですが、比較的長期間運用されるファンドの中には3カ月ごとや6カ月ごとに分配金を受け取れるものもあります。
運用に手間がかからない
投資を行った後は、放置しておいても大丈夫な点が両者の共通点です。
どちらの投資商品も資金の運用はサービス提供者が行うため、投資家は運用中に特にすることはありません。
不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングの相違点
ここでは、不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングの相違点について紹介します。
投資対象が異なる
不動産クラウドファンディングでは、投資した資金は「不動産の購入」に充てられます。
サービス提供者は投資金で不動産を購入し、それを運用することで得られる賃貸収入や売却益を投資額に応じて投資家に分配します。
一方、ソーシャルレンディングでは投資した資金は「第三者への貸付」に使用されます。
サービス提供者は集めた投資金を事業を行う企業などに貸し付け、その利息を投資額に応じて投資家に分配します。
関連する法律が異なる
不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングはそれぞれ異なる法律に基づいています。
不動産クラウドファンディングは「不動産特定共同事業法(不特法)」に基づく投資商品であり、事業を行うためには事業の種類に応じて国土交通大臣や金融庁長官、または各都道府県知事の許可が必要です。
一方、ソーシャルレンディングは「金融商品取引法(金商法)」および貸金業法に基づく投資商品です。
事業を行うためには第一種金融商品取引業または第二種金融商品取引業の登録、および貸金業の許可が必要です。
また、これらの事業を監督する省庁も異なります。
不動産特定共同事業者は国土交通省が管轄し、金融商品取引事業者は金融庁が管轄しています。
不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングで共通するメリット
不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングには共通するメリットがいくつかあります。
具体的には、以下のようなメリットが共通しています。
共通するメリット
- 少額から始められる
- 預金や債券などと比べて利回りが高い
- 運用の手間がない
- 景気・為替変動などの影響をほとんど受けない
- 定期的に配当が得られる
不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングで共通するデメリット
メリット同様、不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングには共通するデメリットがいくつかあります。
具体的には、以下のようなデメリットが共通しています。
共通するデメリット
- 事業者リスクがある
- 原則として中途解約できない
不動産クラウドファンディング特有のメリット・デメリット
不動産クラウドファンディング特有のメリット
不動産クラウドファンディング特有のメリットには以下のようなものが挙げられます。
不動産クラウドファンディングのメリット
- 現物不動産の裏付けがある
- 投資リスクを低減する優先劣後出資方式がある
不動産クラウドファンディングの投資対象は不動産です。
現物の不動産には価値があり、数年間の運用期間中に不動産市場の変動で価値が下がることはあっても、完全に無価値になる可能性は非常に低いです。
さらに、不動産クラウドファンディングには「優先劣後方式」という元本割れリスクを軽減する仕組みがあります。
これは事業者自身も資金を出し、運用で損失が発生した場合、その損失を事業者の出資分から補填する仕組みです。
不動産クラウドファンディング特有のデメリット
不動産クラウドファンディング特有のデメリットには以下のようなものが挙げられます。
不動産クラウドファンディングのデメリット
- 不動産投資が抱えるリスクをそのまま負う
不動産クラウドファンディングはファンドを通じて少額から投資できる方法ですが、リスクの本質は現物不動産とほぼ同じです。
運用中の不動産に空室が発生すると賃料収入が減少し、利益が減る可能性があります。
また、運用期間中に不動産の価値が下がることも考えられます。
さらに、災害などによる建物の損傷や倒壊のリスクも存在します。リスクを軽減する対策はありますが、不動産投資を行う以上これらのリスクは避けられないものです。
ソーシャルレンディング特有のメリット・デメリット
ソーシャルレンディング特有のメリット
ソーシャルレンディング特有のメリットには以下のようなものが挙げられます。
ソーシャルレンディングのメリット
- 投資対象事業が幅広い
- 担保・保証などによるリスク低減措置のあるファンドがある
ソーシャルレンディングの利点として投資先の事業が非常に多岐にわたることが挙げられます。
不動産そのものに投資する不動産クラウドファンディングとは異なり、さまざまな事業に投資することが可能です。
さらに、事業がうまくいかなかった場合に備えて担保や保証が付いているファンドも存在します。
元本が完全に保証されるわけではありませんが、一定のリスクを軽減する仕組みがあるため、安心感があります。
ソーシャルレンディング特有のデメリット
ソーシャルレンディング特有のデメリットには以下のようなものが挙げられます。
ソーシャルレンディングのデメリット
- 貸し倒れリスクがある
ソーシャルレンディングでは、まず資金を預けるサービス提供者とその資金を融資する第三者の事業者、二つの事業者が関与します。
不動産クラウドファンディングでもサービス提供者の倒産リスクは存在しますが、融資先の倒産リスクはソーシャルレンディング特有のものです。
このため、貸し倒れ、つまり資金が戻らない可能性もあります。
そのため、ソーシャルレンディングではサービス提供者の信頼性やファンドの対象事業の内容に加えて、融資先の信用度も詳細に確認する必要があります。
不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングはどちらがおすすめ?
不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングについて、それぞれ以下のような人におすすめできます。
不動産クラウドファンディングがおすすめな人
不動産クラウドファンディングの魅力の一つは住居や商業施設など、さまざまな種類の不動産に投資できる点です。
一般的に、不動産投資は裕福な人々や多額のローンを組むことができる人々に限られるというイメージがあります。
しかし、不動産クラウドファンディングを利用すれば最低1万円程度の少額から多様な不動産に投資することが可能です。
特に、一般の投資家が直接投資するのが難しい商業施設や物流施設、ホテルなどにも投資できる点が大きな利点です。
このように、不動産クラウドファンディングは不動産投資に興味があっても一歩踏み出せなかった人々にとって非常におすすめの方法です。
さらに、不動産クラウドファンディングの中には任意組合型ファンドと呼ばれるものがあり、これらのファンドは相続税の評価額を引き下げる効果があります。
相続税対策を考えている方には、こうしたファンドが特におすすめです。
ソーシャルレンディングがおすすめな人
ソーシャルレンディングの利点の一つは、物ではなく「事業に資金を提供する」という視点を持てることです。
ソーシャルレンディングではサービスプロバイダーを通じて資金を貸し出すことでその先の事業者が行うプロジェクトを支援することになります。
例えば、街で行列ができるほど人気のあるレストランを見たとき、「この店に投資できたらいいな」と思ったことはありませんか。
ソーシャルレンディングなら、そのような願いを実現することができます。
さらに、投資対象となる事業は多岐にわたり、飲食業、不動産、ITサービス、さらにはSDGsを意識したインパクト投資まで、非常に多様です。
そのため、ソーシャルレンディングはさまざまな事業に興味を持ち投資してみたいと考える人に適しています。
まとめ
今回は、不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの共通点・相違点について解説しました。
この記事が、みなさんの不動産投資をはじめるきっかけになれば幸いです。
30代のサラリーマン。妻と二人のこどもと四人暮らし。
将来の資金のために、不動産投資を勉強中。
最近は不動産クラウドファンディングに興味も持ち始めている。